こんにちは。株式会社モルフォの平井駿です。本ブログは二部構成の海外赴任体験記のうちの第二部です。第一部では駐在開始から技術者としての活動を中心に記載しました。第二部では、会社のCEOに任命されたのちに直面した経営課題およびその解決について記載します。
創業からしばらく順調に売り上げを伸ばしてきたTop Data Scienceですが、2021年に売上の伸びにブレーキがかかり、2022年には初の赤字転落をしました。これは増大した人員に対して売り上げの増加が伴わなかったことが直接的な原因です。戦略的に見ると、ビジネスの幅を広げすぎたことが売り上げの低下につながったと考えられます。
このような状況を受け、2022年の冬に私がCEOに就任することとなりました。いつか会社経営に携わりたいと考えていた私は、またとないチャンスだととらえ、この役割を引き受けることとしました。
目下の目標は会社の利益を回復し、黒字化させることです。当時の状況としては、安定した売上が不足しているという課題がありました。この当時、会社の収益源は主に以下の3分野から成り立ちました:
- 産業用画像処理技術
- 森林資源産業に向けた最適化技術
- ヘルスケア技術
ソフトウェアを実用化させ、長期間使用してもらうには、各分野の深い知識が必要です。例を挙げると、各事業を取り巻く法規制、業界構造、ライバル企業などです。我々のような小規模の企業が幅広い分野に技術を提供するということは、各分野に費やす労力が分散してしまうことを意味します。検討の結果、産業用画像処理技術をビジネスの主軸と置き、短期的に売上につながりにくいヘルスケア技術は優先度を下げるという選択を行いました。
また、2023年になると、徐々にコロナウイルスの行動制限が緩くなり、海外出張が容易になりました。そこで私は一気に日本顧客への訪問を増加させる作戦を取りました。これは、既存顧客である日本からの売上を増加させることが短期間で効果が出やすい施策であると考えたからです。現場訪問を重視した結果、いくつかのプロジェクトを実用化まで持っていくことができました。
また、もう一つ重要な点としてはフィンランドからの資金的な支援です。我々はEUおよびフィンランドが支援する複数のプロジェクトに関わっており、この資金を活用し自社の独自技術研究を進めることができています。ここで開発した技術は、会社全体の技術力の底上げに役に立っています。
更には、社員の働きやすさを向上させることも重要な役割の一つです。開発者が気持ちよく働いてもらえるように、日常的に感じている苦労や不満を把握して改善をする必要があります。
これらの作戦は功を奏し、結果的に安定した売上をもたらすことができました。2023年度には下期黒字を達成し、2024年度には単年度黒字化を達成しました。
会社の経営は日々困難の連続です。このような苦労をしても海外拠点を持つメリットはどこにあるでしょうか?この4年間の経験を通して私はこのように考えます:
- 社内からだけでは生まれない新たな発想で開発を行うことができる
- ビジネスの幅を広げることができる
- 社員のスキルアップにつながる
スキルアップについて、私はこの期間に大きく自分が成長できたと感じます。ソフトウェアエンジニアとして開発に携わるだけでは会社の活動に包括的に関わることができませんでした。優秀な技術者と切磋琢磨して良い製品を作り、お客様に使って喜んでもらう。このことにとても幸せを感じます。私にとっての駐在員生活は、苦労も倍だが喜びも倍、そのような日々です。