(文献紹介) 画像復元:Plug-and-Play ADMM

はじめまして、CTO室所属の長山と申します。今回は、最適化アルゴリズムとノイズ除去アルゴリズムを組み合わせた非線形画像復元のフレームワークを紹介します。

画像復元とは、劣化した観測画像からクリーンな未知の原画像を推定するタスクであり、ボケ除去や超解像、インペインティングなど幅広い問題を内包しています。 一般に、観測画像は原画像の情報を十分に持っていないので、原画像の推定は劣決定となり解が一意に定まりません。 そのため、原画像に関する事前知識(Prior)を与えた最適化問題として画像復元を定式化し、解空間に制約を与えることがよく行われます。

制約付き最適化問題の解放として、ADMM(Alternating Direction Method of Multipliers; 交互方向乗数法)が有名です。 ADMMは非 Deep Learning 系の反復アルゴリズムの一種であり、もとの問題を複数の小さな部分問題に分割し順番に更新することで最適化を実現します。 また、部分問題が単純であれば一次収束が保証されるメリットがあります。

Plug-and-Play ADMM

S. H. Chan, X. Wang and O. A. Elgendy, "Plug-and-Play ADMM for Image Restoration: Fixed-Point Convergence and Applications," in IEEE Transactions on Computational Imaging, vol. 3, no. 1, pp. 84-98, March 2017, doi: 10.1109/TCI.2016.2629286.

従来の ADMM では、効率的に計算を行うために、更新式(部分問題の最適化)が単純である必要があり、画像復元応用では Prior の選び方に強い制約がかかります。 本論文で用いられる Plug-and-Play ADMM(PnP-ADMM)は、そのような制約を緩めて柔軟に Prior を扱うアルゴリズムです。

基本的なアイディアはとても単純で、Prior と更新式の因果関係を逆転させて考えます。 つまり、更新式を先に定めることで対応する Prior が(implicitに)導かれると解釈します。 その上で、この更新式をデノイザ(ノイズ除去アルゴリズム)とみなします。 この発想転換により、既存の高性能なデノイザ(BM3D, DnCNN, etc.)を画像復元問題に手軽に組み込めるようになります。

デノイザを選ぶ際にはアルゴリズムの収束性が問題になりますが、論文では広いクラスのデノイザで収束することを証明しています。 さらに、単一画像超解像への応用例をあげ、Deep Learning系アルゴリズムと比較しても高い性能を示すことを報告しています。